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効率的な勉強法を脳神経学者の池谷裕二さんから学ぶ

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記憶力がよくなったらいいのに、と思ったことはありませんか?
私は社会人になった今でも常々思ってますし、毎日勉強に追われる学生の方も、いま現在痛感していることかと思います。

今回はそんな効率的に勉強するための方法を、脳神経学者の池谷裕二さん著書『受験脳の作り方―脳科学で考える効率的学習法 (新潮文庫)』よりご紹介。

 もくじ

1.学習効率が下がる『記憶の干渉』と『レミニセンス効果』

人間は一度に多くのことを覚えようとすると、記憶と記憶が干渉し合って学習効率を下げてしまいます。これを脳科学では『記憶の干渉』と呼ぶ。
そのため、一度に大量の詰め込みを行う集中学習は避けたほうが良い。その代表例が一夜漬けだ。そもそも現代科学では、学習効率を上げるためにはインプット(覚える事)よりもアウトプット(復習すること)することを重視している。

また、一度忘れてしまった記憶でも改めて覚えなおした知識は、まったく初めて覚える知識よりも覚えやすくなる『レミニセンス効果』というのがある。
この二つの観点から、勉強というのはコツコツ積み上げていくものであり、同じ時間勉強したとしても、短期集中で勉強した場合は圧倒的に効率が悪く、一回辺りの勉強時間を短めにして回数を増やすスタイルのほうが効率的だ。

このことは実際に実験により証明されており、集中学習(いわゆる一夜漬け)グループと分散学習(複数回に分けて勉強した)グループでは、総勉強時間は同じだったにも関わらず、記憶の保持期間に大きな違いが見られた。分散学習グループはなかなか覚えたことを忘れなかったのである。

つまり明日行われる小テストの結果は、一夜漬けだろうと複数回に分けて勉強したグループだろうと大した差が出ないが、三か月後の期末テストの結果には大きく差が見られるし、一年後のセンター試験ではその差がさらに開くと言った形になる。

2.効率的な復習方法

スワヒリ語を40個覚えてもらう実験の結果、興味深いことがわかった。
実験は4つのグループに分けられ、一回目のテストを受けてから時間を置いて、もう一度テストを受けさせられる。この時のグループ分けは

A.すべての単語を復習させられ、テストは二回とも40問受けさせられたグループ
B.一回目のテストで間違えた問題のみ復習し、テストは二回とも40問受けさせられたグループ
C.すべての単語を復習させられるが、二回目のテストは間違った問題だけ受けさせられたグループ
D.一回目のテストで間違えた問題のみ復習し、二回目のテストは間違えた問題だけ受けさせられたグループ

という風に分けられた。
そして最終的に多くの単語を覚えられたのはAグループであったが、ほぼ同じくらいBグループも覚えた単語は多かった。そしてCとDグループは最終的に覚えられた単語がAグループの半分に満たなかった。

このことから間違えた問題のみ復習するが、テストは全問受けるのが少ない労力で効率的に学習できる方法だとわかった。つまり既に覚えてることだとしても、思い出すことは何度もする必要があるし、勉強し直すところは自分の理解できてなかった部分だけでいいということだ。

3.脳は疲れない

勉強して疲れを感じたら、それは目や肩などの身体的疲労が原因だと池谷氏は言う。特に目の疲労は首や腰にまで影響してくるので早めに対策を打たなければいけない。

具体的には、まぶたの上から四十度ほどの温度で十五秒ほど温めるのが良い。濡らしたタオルを電子レンジで温めて、数十秒加熱したものを用意しよう。
また、食事面ではビタミンBやCの不足が目の疲れの原因になるので注意とのこと。

4.年齢ごとに脳は記憶の仕方を変えている

記憶には経験記憶・知識記憶・方法記憶の3つがある。
経験記憶とは自分の体験を通して覚えた記憶(今日の出来事など)で、知識記憶は英単語や円周率、俳優の名前などの知識・情報ベースでの記憶法だ。これらは言葉で説明できるのに対し、方法記憶は自転車の漕ぎ方のような言葉では説明できない記憶(いわゆる身体が覚えている)に当たる。

これらは経験>知識>方法の順に高度な記憶法であり、赤ちゃんのころは脳が未発達なので、もっとも簡単な方法記憶を使って体の動かし方を覚えていく。
私たちが子供の頃の記憶をハッキリ覚えていないのは、脳が発達しきっておらず経験記憶に向いていないからだ。

そして年齢を重ねることで今度は知識記憶が発達し言葉を覚え、中学から高校を境に経験記憶が優位になる
知識記憶はいわゆる丸暗記が得意だが、経験記憶は丸暗記が得意ではないので、中学まで記憶力が良かったのに高校になって記憶力が落ちる生徒がいるのはこのためだ。

つまり、中学生から高校生になるに辺り、暗記の仕方も変えていく必要が出てくる。脳の仕組みに逆らって覚えようとするのは、非常に非効率的でしかない。
経験記憶は自分の過去の経験や知識と絡めて新しい知識を覚えるのに向いているので、心理学でチャンク化と呼ばれる知識同士の関連を見つける手法で覚えるのがいいだろう。

5.なぜ努力の継続が必要なのか?

勉強と成績の関係は比例的に伸びるものではなく、等比級数的(雪だるま式)に増えていくもので、最初のころは大した成績アップにはならない。しかし、継続していればいつか爆発的に伸びる頃がやってくる。

また、知識と知識の関連を見つけるには色々な知識が必要だ。つまり勉強すればするほど、勉強というのは楽になっていくのだ。
だからこそ、勉強において努力の継続は不可欠であり、自分には才能がないからと諦めないでほしいと池谷氏は締めくくっている。

関係ないが、この話を最後に持ってくるのは綺麗にオチが付いてて上手いなと個人的に思った。

終わりに

というわけで、脳神経学者が語る効率的な勉強法でした。
本書のなかには池谷氏へ送られた受験生からの体験談や、記憶の詳しいメカニズムなども盛り込まれ、勉強法以外の部分でも結構面白い内容となっていた。

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