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なぜ効果が無い?目標を宣言することで達成率を上げる心理テク『パブリックコミットメント』の正しいやり方とは

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夢を叶えたり、なにか目標を達成するために「自分の目標を皆に宣言するといいよ!」と聞いたことありませんか?
宣言することによって退路を断ち、良い訳の出来ない状況を作り出すのです。
これによって目標達成率を上げる心理テクニックを『パブリックコミットメント』と言います。日本語に訳すと『大衆への公約』といった感じですね。

しかし、パブリックコミットメントは正しく使わないと逆効果にもなる諸刃の剣。
それを知らず「なるほど、周りの人に夢や目標を語ればいいんですね!」と安易に使っていては、いつまで経っても夢や目標は叶いません。

そんな訳で今回は、パブリックコミットメントの正しいやり方について解説します!

 もくじ

1.どうでもいい人たちに宣言しない

実は過去の研究において、パブリックコミットメントの効果については『肯定的な結果』も『否定的な結果』も出ていた。
そのため2010年に行われたTEDスピーチにおいて、アメリカの起業家デレク・シヴァーズは「パブリックコミットメント」について否定的なスピーチを行い、夢や目標は内に秘めておいたほうがいいとコメントしている。

ところが2019年に発表された論文がこれを再度否定。
オハイア州立大学が171人の学生を対象に、目標宣言を

・偉い人(尊敬できる人)に宣言したグループ
・どうでもいい人に宣言したグループ

に分けて目標達成率を調べたところ、尊敬できる人に宣言したグループは目標達成率が跳ね上がったのに対し、どうでもいい人に宣言したグループは変化なしだった。
つまり「この人たちからの信用を失いたくない!(嫌われたくない)」という動機がしっかり沸かなければ、パブリックコミットメントは効果を発揮しないのである。

2.内容は具体的に

具体的に決めないとどうなるか?

人間は良いことをしようと思っただけで気分がよくなり、すでに目標を達成した気分になってしまいます。たとえば

・ボランティアに参加したいと答えただけで、そのあと自分にご褒美を挙げたいと思う被験者が続出した。
・チャリティーに寄付しようと思っただけで、実際には寄付してないのに、そのあと買い物したい気分になった。

などの研究があります。
このように、人間は行動を伴わなくても空想するだけでやった気分になってしまうので、心理学者のケリー・マクゴニガルは著書『スタンフォードの自分を変える教室 (だいわ文庫)』にて、決意することの危険性を説いています。

行動内容を具体的に

そこで登場するのが「行動内容を具体的に決める」ことです。
メンタリストDaiGo氏の著書『倒れない計画術:まずは挫折・失敗・サボりを計画せよ』では、「いつ・どこで・どのように」行動するのか決めることで、実行率が高くなると述べています。

他にも、リハビリ現場などで活躍する作業療法士の菅原洋平さん著書『すぐやる! 「行動力」を高める“科学的な”方法』でも、「何のために行動し、どこに向かおうとしてるのか」を脳に伝えないと、脳が身体に指示を出せないと言います。

脳は抽象的なイメージを扱うのが下手ということを理解しておきましょう。

3.日付は近いほうが良い

脳の習性

人間は未来の報酬よりも、目先の報酬に飛びつきやすくなっています。
たとえば「いま目の前にある美味しそうなショートケーキ」と「ダイエットを半年頑張って手に入る理想的な体型」とでは、手に入りやすさがまったく違いますよね。そこで脳は簡単に手に入る(つまりショートケーキを食べる)ほうを選ぼうとするのです。

これは実験でも証明されており、いますぐ手に入る100ドルと、一週間後に手に入る105ドルでは、多くの人がいますぐ手に入る100ドルを選んだそうです。

未来の自分は他人

さらに別の実験によって、人は未来の自分を過大評価するし、自分事ではなく他人のことのように考えている事がわかっています。
プリンストン大学の心理学者エミリー・プロ―ニンは、学生たちに「科学の発展のためにコレを飲んでほしい」とお願いし、マズいドリンクを飲んでもらいました。このとき

1.いますぐ飲む
2.数か月後に飲む

という風にグループを分け、学生たちがどれだけマズいドリンクを飲んでくれるかを調べたところ、2番目のグループの学生たちはたくさん飲むことを承諾しました。
また「他の学生にお願いしたら、どれだけ飲んでくれると思う?」と質問したところ、グループ2の学生たちと同じくらい飲むべきと答えました。

このことから人間は未来の自分を他人のように考えていることがわかりました。また、この習性により無茶な計画を立てる事もわかっています。

未来の目標は具体性に欠ける

さらに未来の目標は「何をするか?」という具体的行動指標ではなく「どうなりたいか?」という将来像になりやすいです。
そのため、前述した「内容は具体的に」という部分と相反するものになりがちです。
対して、近い目標は「何をしなければいけないか?」にフォーカスするので、具体的行動指標になります。

上記3点の理由により『達成したい目標を宣言する』場合は、数日で結果が出せるもののほうが効果を発揮しやすいです。

まとめ

というわけで、パブリックコミットメントの効果を最大限に利用するならば

・どうでもいい人たちに言わない
・達成するために何をするのか具体的に決める
・出来るだけすぐ結果が出ることにする

の3点に気を付けましょう!
逆に言えば、新年の抱負はあまり人に言わないで内に秘めた方がいいかもしれませんね笑

合わせて読みたい
超簡単に意志力を上げる科学的なテクニックとは?
なぜすぐ行動できないのか?その傾向と対策を菅原洋平さんから学ぶ

参考
  
デレク・シヴァーズ 「目標は人に言わずにおこう」 | TED Talk
目標を達成したければ人に言え!しかし、どうでもいい相手には何も言うな!という実験の話 | パレオな男