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決意でヤル気が低下する!? 偽りの希望症候群(シンドローム)とは

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あなたにもこんな経験ないでしょうか?

『明日からダイエット頑張ろう!』
『毎日筋トレしてカッコイイ身体になろう!』
『コツコツ勉強していい成績取ろう!』

それ……ちゃんと続いてますか?
こういった決意は、実際のところあなたの行動力を大きく阻害します。
明日から頑張ろうと決意したはずなのに、いざ日付を跨ぐと昨日のモチベーションはどこへやら。
しかしこれは人間の脳の構造的に仕方のないことなのです。
というわけで今回は「なぜ決意しても実行に移せないのか?」を解説し、その対策法を伝授します。

 

もくじ

偽りの希望症候群(シンドローム)とは

多くの人が何か目標を見据えた時に最初にする行動は何でしょう?
そう、決意です。
まずはゴールを定め、そのために何をやるか決め、そして「頑張ろう!」と思う訳です。
ところが、いざ手を付けようとしても何故かヤル気が出てこない。

ダイエット頑張らなくちゃいけないのに……
筋トレしなくちゃいけないのに……
勉強しなくちゃいけないはずなのに……

こういった「わかってるのに出来ない!」という状態は誰にでも経験あると思います。
これは脳の仕組みによるもの。脳は面白い特性を多く兼ね備えています。
そのうちの一つが、空想と現実の区別を付けられない事です。

 

たとえばダイエットを始めようとするのは「痩せたいから」という理由がありますよね?
このとき、あなたは無意識にダイエットに成功して痩せた自分を想像しています
もちろん現実問題として、現段階では痩せていないし、意識すればそれが現実でないことにすぐ気付きます。

しかしそうでない場合、脳はその痩せた自分という空想を現実のものとして受け入れてしまうのです!
その結果、脳の報酬系が活性化して大きな満足感を得ます。
つまり自分を変えようと決意するだけで満足してしまう。これが偽りの希望症候群です。

 

偽りの希望症候群(シンドローム)はループする

そしてこの症状の怖いところは、何度も同じ状況に陥ってしまうことです。
現状を変えようと決意することで、脳は一時的にモチベーションを上げてはくれますが、それが仇となってかなり無茶苦茶な理想を掲げてしまいます。たとえば

「明日からは毎日2時間勉強しよう!」
「毎日30分ランニングするぞ!」
「週6で12時間働けば欲しい給料に手が届くな」

こういった目標を掲げたことってありませんか?
しかし現実には続かなかったはずです。
さらに酷ければ「やろう!」と思ったけど、実際に手を出してすらいない事だってあります。
これは脳の構造上仕方のないことなのです。

人間の脳は極力エネルギーを使わないように工夫されています。
その工夫の一つが「習慣化した行動を好む」というもの。
逆に習慣化されてない行動(上記のように決意した行動)は、脳にとってエネルギーを多く使うため自然と避けようとする傾向があります。そりゃ、毎日たくさん頭を使わなくちゃいけない生活はメンドクサイですよねー笑

 

さて……それでも稀に強靭な意志力を持って決めた事をやり通す人もいらっしゃいますが、ほとんどの人は自分自身を制御してる脳みそが敵に回ったのでは勝ち目がありません。
それゆえに、決めた事をやり通せず「俺はなんて意志力の弱いダメ人間なんだ……」と自己嫌悪に陥ります。

では、その後に人間が取る行動は何でしょうか?
答えは「今度こそちゃんとやるぞ!」という決意です。
そうです。また偽りの希望症候群に罹るのです!

ちゃんとした対策を積まずに決意をしたところで、何度でも同じ失敗にぶち当たります。
私も小・中学生のときに何度も母親に「進研ゼミやりたい!」とせがみ、結局続かず解約され、「今度こそちゃんとやるから!」と言って説得したものです。

 

行動力を高める『ビジュアライゼーション』とは

それではここから偽りの希望症候群への対処法に移っていきます。
偽りの希望症候群の対策において大切なのが、自分が行動を起こすには具体的にどういった状況が必要なのか自分自身がしっかりと理解することです。

人間の脳は、物事の具体的な手順を理解していないと行動に移せないようになっています。
たとえばあなたが今から「年収一億になるぞ!」と決意をしても、どうすれば年収一億になれるか分からないから行動のしようがありませんよね?
人間の脳も同じように「まずはコレをやって、次にコレをやって、この状況になったらこう動く」という風に決めておかないとなかなか行動に起こせません。

ここで登場するのが『ビジュアライゼーション』というテクニックです。
これは物事を具体的に想像することで行動力を高めるという手法になります。
たとえば「毎日30分筋トレをするぞ!」と決意した場合

・いつやるの?
朝おきてトイレに行った後?
学校から帰ってきてカバンを机に置いてから?

・どこでやるの?
自分の部屋?
どこかのトレーニングジム?

・何をどういった順番でやるの?
○kgのダンベルを持ち上げる→スクワット○回→腕立て○回

といった風な状況をしっかり決めます。
最低でも「いつ・どこで・どのように・どういった風に」は決めましょう。
さらに成功率を挙げたいなら「誰と」も追加するとより効果的です。
過去に詳しく解説した記事がありますので参考にしてみてください。めちゃオススメです!

人間は未来の自分に期待する生き物

さて、ここで注意しなければいけない事があります。
それは人間は未来の自分を過大評価する生き物ということです。

面白いことに、なぜか人間は「今決めたことを未来の自分はちゃんとやり通せるだろう」という謎の自信を持っています
しかもおっそろしい事に、過去に失敗したことに対してもです。
たとえば以前に痩せるために食事制限をして失敗したにも関わらず「今度の自分はちゃんと食事制限を守れて痩せるはずだ」と思い込んでしまうのです。
このことについて、スタンフォード大学の心理学者ケリーマクゴニガル教授も著書『スタンフォードの自分を変える教室』において注意喚起をしております。

 

以上の人間特性もしっかりと認識し、対策を立てておけばより成功率は高まります。
たとえばメンタリストDaiGo氏は「モチベーションが高い日と低い日」だったり、「時間がある時と無い時」などで何通りかのプランを考えておくことを推奨しています。

特に私が個人的に大切だなと思ったのは「どんなにモチベーションが低くても絶対に達成できる内容(毎日筋トレが目標なら、スクワット1回でもOKとするなど)を用意する」というものです。
バカにしてるのかと思うかもしれませんが、決意したことをやり遂げるためには緩い日も作って毎日コツコツ続けていく習慣を作ることが大切なのです

 

また、何かを成し遂げようと決意した時は非常にモチベーションが高いので無茶な計画を立ててしまいがちです。それゆえに挫折する確率を高くしてしまっています。
そうなると自己肯定感はどんどん薄れ、それを払しょくしようとまた大きな決意をして満足し、実際には行動できない高すぎる目標を前に諦め、やっぱり自分はダメな人間なんだと自己肯定感を失う。

こうした偽りの希望症候群のループから抜け出すのに最も手っ取り早いのは
先ほど述べたように低い目標も織り込むことです。
しかし何故かほとんどの人は遅れを取り戻そうとするかのように、以前失敗したときのものより高い目標を掲げてまた失敗します。6段の跳び箱も飛べなかったのに8段の跳び箱にチャレンジするようなものです。
冷静に考えれば失敗するのは目に見えていますよね笑
だからこそ、なにか「自分を変えよう!」と決意した人は低めの目標設定を心がけましょう。

終わりに

と言う訳で、決意でヤル気が低下する偽りの希望症候群の解説と対策でした。
どこかの作家だか漫画家だかが「前まではモチベーションが高い方が普通だと思ってたが、モチベーション低いときの方こそ正常なんだと思うようになった」という趣旨のことを発言していたけれど、とても核心を突いたセリフだなと思いました。

それと近年の心理学界では意志力と生活習慣は結構密接な関係にある事がわかっております。
というのも、意志力って環境に大きく依存するようだからだ。
もし「意志力弱いなぁ~」ということで悩んでいるなら、意志力を鍛えるという方向ではなく習慣改善からのアプローチをかける事をオススメする。

それでは今回はこの辺で。
今回参考にした本はコチラ。