ネガティブな気分を解消するテクニックとして最近注目を集めているのが「エクスプレッシブ・ライティング」です。
このテクニックはメンタリストDaiGo氏が以前から不安対策として何度も紹介していることから「聞いたことある!」って人も結構居るかもしれません。
実際、その効果のほどは数々の研究で実証済みです。
が、これに警鐘を鳴らす人もいます。
それはベストセラー『学びを結果に変えるアウトプット大全 』でお馴染み、最近ではyoutubeチャンネルも好調な精神科医の樺沢紫苑先生です。
今回はこの「エクスプレッシブ・ライティング」について両者の意見の食い違いと、正しいエクスプレッシブライティングのやり方について解説していきます。
もくじ
1.エクスプレッシブ・ライティングとは何か?
エクスプレッシブライティングとはネガティブな感情を紙に書き出すことでネガティブな気分を解消するというテクニックです。
そのシンプルで実践がしやすいのも人気な理由の一つでしょう。
エクスプレッシブライティングは他にも「ジャーナリング」とか「筆記開示」という名称でも呼ばれています。そのため当記事では以後「筆記開示」で統一して紹介します。
筆記開示の効果は数々の研究で証明されており、筆記開示を始めてから数週間~数か月で鬱や不安の感情が減り、感情の波が穏やかになることが1997年の時点でわかっていました。
以後研究は着々と進み、2009年に行われた研究では幸福感の高まりや認知機能(脳の処理機能)の改善まで確認されています。
また、当初20分が推奨されていた筆記開示にかける時間についても、ミシガン大学が2017年に行った研究によって8分まで縮めても効果があることが確認されました。
このように、筆記開示は科学的に効果のあるストレス解消法として名を連ねています。
2.筆記開示否定派の意見
が、ことはそう単純ではありません。
精神科医の樺沢先生は日頃からポジティブ日記を推奨しており、その一方でネガティブな感情を書き出すことには否定的です。
この動画の内容を要約すると
ネガティブなことを書き出すことによってネガティブな記憶が強まり、嫌な記憶が忘れられなくなるので即刻辞めるべき
という感じです。
これは非常に正しい指摘で、実際に記憶と言うのはアウトプットした回数に比例して、記憶が強化されることが既に確定的事実として判明しています。
あなたも英単語を覚えるために何度も何度も読み返したり書き出したりしませんでしたか?
何度も思い出すというのは広く一般的に知られた「優れた記憶術」です。
言い方を変えれば樺沢先生が言うように、ネガティブを書き出すことによってわざわざ嫌な記憶を覚えるために努力しているということになります。
ゆえに正しくないやり方で筆記開示を行えば「嫌な記憶が忘れられない」という事態が発生するので、研究結果から示された効果とは真逆の効果をもたらしてしまいます。
実際、いくつかの研究ではメンタルを悪化させたという研究結果も出ていますし
ネット上で筆記開示に関する体験談を見てみても「むしろ余計イヤな気分になった」という意見が散見しています。
3.どうして食い違いが起こるのか?
さて、どうしてこのような食い違いが起こってしまうのでしょう?
これも科学お得意の「効果には個人差があります」というやつなのでしょうか?
結論を言ってしまえばそうではありません。
ネガティブ感情に対する認識が人によって違うからです。
一度冷静になって考えてみてください。
ネガティブな感情とは具体的にどんな感情をいいますか?
・怒り
・不安
・悲しみ
・混乱
・嫌悪
・恐怖
このように一口にネガティブ感情と言っても、その種類は多岐に渡ります。
しかしこれらを区別せずに一纏めに「ネガティブな感情」と説明するから、正しくないやり方をしてドツボにハマる人たちがいるのです。
なのでここで一つ正しい筆記開示のやり方について解説しますので、是非覚えて帰ってください。
4.正しい筆記開示のやり方
ここまでの説明を聞けばわかると思いますが、筆記開示は吐き出すネガティブ感情が何かによって効果が変わってきます。
・悩み
・不安
と言った未来に対する心配を書き出した場合に筆記開示は効果を発揮します。
逆に樺沢先生が挙げていたように
・愚痴
・後悔
・怒り
などの過去の出来事に纏わるネガティブ感情は、嫌な記憶の強化に繋がるので絶対にやってはいけません。
実際に筆記開示が効果を示した実験の一例としては「テスト前に筆記開示を行った学生はテストの結果がよくなった」というものなどです。
もちろん学生がテスト前に起こす不安など「いい点数取れるかな?」とか「ちゃんと問題解けるかな?」というこれから起こる未来の出来事(テスト)についてであるのは誰にでもわかることでしょう。
5.なぜ筆記開示は効果があるのか?
では最後になぜ筆記開示は効果があるのか解説していきます。
さきほど未来に対するネガティブ感情を書くことが筆記開示が効果を表す条件だと説明しました。
実は未来に対する不安を書き出すことでワーキングメモリと呼ばれる部位の脳内リソースを解放することができます。
このワーキングメモリが一杯使われてると、他のことに気を遣う余裕がありません。
例として、何個もゲームアプリを起動してる状態のスマホを思い浮かべてください。
重いアプリを何個も立ち上げてたらスマホが遅くなりますよね?
そういった時には使ってないアプリを閉じてスマホを軽くすると思いますが、未来の不安を紙に書き出すのは使ってないアプリを閉じる行為と一緒なのです。
悩みを言語化して書き出す
未来に対する不安は『未知』や『無知』による不安です。
そうしたものに対して、私たちは必要以上にネガティブな感情を抱きます。
その対策として、まずは何に対して私たちが恐怖を抱いてるのか明確にする必要があります。
つまり脳内で考えてることの言語化です。
言語化についてはコチラの書籍なんかが参考になるでしょう。
そして理解できるものに対しては対策を打つことができます。
たとえば「漠然と将来が不安……」というのを言語化していき「老後資金が足りるか不安……」という風になったら『今からもっと老後資金を蓄えればいい!』と解決策が見えてきます。
そして解決策が見えれば人の不安は解消されます。
なので未来に関する不安はとりあえず紙に書き出して『見える化』してみましょう。
終わりに
というわけで、正しいエクスプレッシブライティングの解説でした。
ここまで読んだ方にはわかると思いますが、このテクニックはその性質上「過去に起こった出来事」に対してのストレス対策としては意味のないテクニックです。
そのため今抱えているストレスに対しては別のテクニックを使いましょう。
当ブログでも『 一流アスリートほど使ってるストレス対策『情動中心型コーピング』とは』で、効果のあるストレス対策を何個か紹介しております。
また、更に詳しくストレス対策について知っておきたいという方にはコチラの著書がオススメです。
年間5000本もの論文を読むサイエンスライター鈴木祐さんが、効果があることが科学的に認められているストレス対策法を100個紹介しています。
鈴木祐さんはあのメンタリストDaiGo氏のリサーチ協力をしてる方ですね。
ちなみにストレスコーピングリスト(自分用のストレス解消法)を多く持っている人ほど普段からストレスを受けにくく立ち直りも早いことがわかってます。
ということは、ある意味この本を持ってるというだけで『ストレスに強い人』になれる訳です笑
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それでは今回はこの辺で。
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参考
ネガティブを書き出すのは良いのか?悪いのか? - YouTube
書くだけで幸福度と認知機能が高まる「筆記開示」初級ガイド - パレオな男
8分でストレスに強い脳を作るテクニックが確認された件 - パレオな男