ネガティブな気分を解消するテクニックとして最近注目を集めているのが「エクスプレッシブ・ライティング」だ。
このテクニックは、メンタリストDaiGo氏が以前から不安対策として何度も紹介していることから、聞いたことあるという人もそこそこ居るかもしれない。その効果のほどは、数々の研究で実証済みだ。
が、これに警鐘を鳴らす人もいる。
それはベストセラー『学びを結果に変えるアウトプット大全 』でお馴染み、精神科医の樺沢紫苑先生だ。
今回はこの「エクスプレッシブ・ライティング」について、両者の意見の食い違いと、正しいエクスプレッシブライティングのやり方について解説していく。
もくじ
1.エクスプレッシブ・ライティングとは何か?
エクスプレッシブライティングとは、ネガティブな感情を紙に書き出すことでネガティブな気分を解消するというテクニックだ。他に「ジャーナリング」とか「筆記開示」という名前でも呼ばれている。
そのため当記事では以後「筆記開示」で統一して紹介させてもらう。
筆記開示の効果は数々の研究で証明されており、筆記開示を始めてから数週間~数か月で、鬱や不安の感情が減り、感情の波が穏やかになることが1997年の時点でわかっていた。
以後研究は着々と進み、2009年に行われた研究では幸福感の高まりや認知機能(脳の処理機能)の改善まで確認された。
当初20分が推奨されてた筆記開示にかける時間についても、ミシガン大学が2017年に行った研究によって8分まで縮めても効果があることが確認されている。
2.筆記開示否定派の意見
精神科医の樺沢先生は日頃からポジティブ日記を推奨している。
その一方で、ネガティブな感情を書き出すには否定的だ。その証拠動画がコチラである。
この動画の内容を要約すると
ネガティブなことを書き出すことによってネガティブな記憶が強まり、嫌な記憶が忘れられなくなるので即刻辞めるべき
という感じだ。
これは非常に正しい指摘で、実際に記憶と言うのはアウトプットした回数に比例して、記憶が強化されることが既に確定的事実として判明している。
あなたも英単語を覚えるために何度も何度も読み返したり書き出したりしなかっただろうか?
何度も思い出すというのは広く一般的に知られた「優れた記憶術」である。
言い方を変えれば樺沢先生が言うように、ネガティブを書き出すことによってわざわざ嫌な記憶を覚えるために努力しているということだ。
ゆえに正しくないやり方で筆記開示を行えば「嫌な記憶が忘れられない」という事態が発生するので、研究結果から示された効果とは真逆の効果をもたらしてしまう。
3.前提条件を考える
さて「研究結果が効果を確認してるんだからやるべき!」と主張する人たちがいる一方で
「ネガティブを強化するだけなんだから止めろ!」と主張する者たちがいる。
実際に体験者の声も「効果あった」と「逆効果になった」という声が散見。
これでは「どっちを信用すればいいんだよ!?」と困惑してしているところだろう。
それとも科学お得意の「効果には個人差があります」というやつなのだろうか?
結論を言ってしまえばそうではない。
逆効果になるのは何故か?
さて、一度よく考えてほしい。
ネガティブな感情とは具体的にどんな感情だろうか?
・怒り
・不安
・悲しみ
・混乱
・嫌悪
・恐怖
などなど、その種類は多岐にわたる。
しかしこれらを区別せずに一纏めに「ネガティブな感情」と説明するから、正しくないやり方をしてドツボにハマる人がいるのだ。
4.正しい筆記開示のやり方
ここまで説明すればわかると思うが、吐き出すネガティブ感情が何かによって筆記開示の効果が変わってくる。
・悩み
・不安
などの未来に対する心配を書き出すのが正しい筆記開示のやり方だ。
逆に樺沢先生が挙げていたように
・愚痴
・後悔
・怒り
などの過去の出来事に纏わるネガティブ感情は、嫌な記憶の強化に繋がるので絶対にやってはいけない。
ちなみにテスト前に筆記開示を行った学生はテストの結果が良くなったという研究結果がある。
もちろん学生がテスト前に起こす不安など「いい点数取れるかな?」とか「ちゃんと問題解けるかな?」というこれから起こる未来の出来事(テスト)についてであるのは誰にでもわかることだろう。
この実験結果を鑑みれば、センター試験や面接前など強いプレッシャーがかかる事が多い受験生や就活生なんかには特に知っておいてもらいたいテクニックと言える。
終わりに
というわけで、正しいエクスプレッシブライティングの解説でした。
ここまで読んだ方にはわかると思いますが、このテクニックはその性質上「現在・過去に起こった出来事」に対してのストレス対策としては意味のないテクニックです。
そのため今抱えているストレスに対しては別のテクニックを使いましょう。
当ブログでも『 一流アスリートほど使ってるストレス対策『情動中心型コーピング』とは』で、効果のあるストレス対策を何個か紹介しております。
また、更に詳しくストレス対策について知っておきたいという方にはコチラの著書がオススメ。
年間5000本もの論文を読むサイエンスライター鈴木祐さんが、効果があることが科学的に認められているストレス対策法を100個紹介しています。
鈴木祐さんはあのメンタリストDaiGo氏のリサーチ協力をしてる方ですね。
ちなみにストレスコーピングリスト(自分用のストレス解消法)を多く持っている人ほど普段からストレスを受けにくく立ち直りも早いことがわかってます。
ということは、ある意味この本を持ってるというだけで『ストレスに強い人』になれる訳だ笑
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それでは今回はこの辺で。
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参考
ネガティブを書き出すのは良いのか?悪いのか? - YouTube
書くだけで幸福度と認知機能が高まる「筆記開示」初級ガイド - パレオな男
8分でストレスに強い脳を作るテクニックが確認された件 - パレオな男